徒然日記

約7年間の出来ごとです。

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「これ、昨日と一昨日の契約書です。」
月曜日、朝礼が終わり準備をしている先輩に鞄から出し渡した。
土曜日2件、日曜日1件、合計3枚の契約書をヒラヒラさせながら、
「大丈夫?すぐに辞めたりしない? 」
と不躾に聞いてきたが、恐らく問題はない。
3件全てお客さんから契約したいと言ってきたからだ。

うちの会社では契約の期間を設けてはいない。
携帯会社等でよく見られる、「◯ヶ月は絶対に続けなければならず、途中解約する場合は違約金を支払う」というルールがない。

つまり、いつでも配達をキャンセルできる仕組みになっている。

通常、会社の利益を出すためには最低4ヶ月は続けてもらわなければならないと、研修のときに聞いたことがある。

ランニングコストというものだそうだ。

しかし、それを契約時にお客さんに伝えると「とりあえず初めてみようと思っただけなのに、それなら契約しない。」というリスクが生じ契約が摂りづらくなるため、敢えて説明はしない営業がほとんどである。

なので、それを健康面に置き換えて「個人差があるので一概には言えませんが、効果が出るまで出来れば半年を目処に続けて見てください」と伝えるのが常套句となっている。

「すぐに辞めたら意味ないからな。」
3枚の契約書が効いたのか、特に嫌みもないまま先輩は定例会議に出席するため会議室へと向かって行った。

自分も出発しようと準備しようとしたとき、
「お前、車欲しくない?」
急に戻ってきた先輩から聞かれた。
今は自転車で通勤している。いつかは買いたいと思ってはいたが、特にきっかけもなく、かといってそこまで不便でもないので結局そのままだ。

「いや、欲しいと言われれば欲しいですけど今は特に。」
そう答えると予想外の答えが返ってきた。

「なんだ。よかったら俺の車お前にあげるよ。」

急な申し出に一瞬言葉を失った。