徒然日記

約7年間の出来ごとです。

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「ママー。あの人旅行に行ってきたのかなー?」
「指差しちゃだめ‼さっ。早くいきましょ。」

マスクをかけた親子連れに不審者扱いをされつつ
ガラガラゴロゴロ耳障りな不快音を出しながら歩くこと30分。キャリーカートを引っ張りながら出かける人なんて怪しいとしか言えない。道行く人達の視線も痛ければ、引っ張る右手も痛くなってくる。

車の運転技術も下手。だからといってキャリーカートの扱い方が上手いということはない。

一見簡単なように見えるが、実際は簡単じゃない。

少しでも重心がずれると倒れるし、石や雑草等々、わずかでも障害物があれば引っ張ることができないのである。


何度か左手にスイッチして右手の負担を減らしてみようかと試みたが、利き手ですら満足に扱えないキャリーカートは左手では大幅に難易度が上がり、苛立ちが募りストレスにしかならなかった。

精神的にも肉体的にも限界が来てしまう。

ダメだ。休憩しよう。トイレにも行きたいし喉も乾いた。

しかしここでもトラブルが発生してしまう。

いつもなら車に戻り、近くのコンビニまで行くのだか今回はその車がない。

仕方なくそのままガラガラゴロゴロ、もはや相棒みたいな存在感を醸し出しているキャリーを携えて歩き出す。

だがまあ、ここは右も左も田んぼと畑しかない田舎地域。最寄りのコンビニは駅前まで行かないと無い。普通に歩いても15分はかかる。

少し前にニュースで買い物難民が増加とかやっていたが、恐らく今の自分に近い気持ちなんだろうと思いながら歩くこと約25分。途中何回か転ばしたキャリーカートを店先に置き、青い制服がトレードマークのコンビニに入る。

車がないってかなり不便ってこと、先輩わかってんのかよと思いながらスポーツドリンクとあんパンを買い、店を出る。

そして来た道をそのまま帰り、現場まで戻った頃には既に午前11時を回っていた。

このままでは仕事が終わらない。

ペースを上げて意気揚々と相棒を引っ張る。

しかし、まだまだ苦労は続いていく。