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「へー。こんなのあるんすか。」
もの珍しげに渡したパンフレットを見ながら呟き、親に渡しときますと言って中学生くらいの坊主頭の少年は玄関を閉めた。
知らなくても無理はない。
今時牛乳屋と言ってピンとくる人は一体どれくらいいるんだろう?
昔は新聞と同じように牛乳を初めとする乳製品を宅配してもらうことは珍しいことじゃなかった。
玄関先に受け箱(今でいうなら生協の宅配ボックスのようなもの)を置き、配達員がその中に保冷剤と商品を入れる。
その多くは瓶に入った牛乳で、飲み終わった瓶を洗い、受け箱に戻す。
お店によって異なるが週に1~2回、配達のとき、空の瓶も回収しリサイクルする。
配達の時間帯も様々で、基本的に早朝、地域や会社によっては昼や夕方行われている。
大手メーカーから、聞いたことのないような地域密着型の小規模メーカーまで様々ある。
まだ自分が小学生だったころ、宅配を獲っていたことがあったが、これは約1ヶ月の研修で学んだことであり、最初から知っている訳ではなかった。
ちなみに当時獲っていた会社と、今の会社はライバル関係だったこともあり、社内の人達には秘密である。